松江城

「松江城」（まつえじょう）とは、島根県松江市にある城です。日本で天守閣が残る12城のひとつで、山陰で唯一天守が残る城となっています。2015年（平成27年）5月には、天守閣が国宝に指定されましたが、江戸時代からの雛形が残る国宝天守は全国でも「松江城」だけです。天守閣の総床面積は約1,700㎡で、天守台を入れた高さは約30ｍ。現存する12天守の中で、広さは2番目、高さは3番目、古さは5番目に君臨するお城です。

屋根に施された装飾が羽を広げた千鳥のような形であることから、別名「千鳥城」とも呼ばれています。外観は下層部が重厚感のある黒塗りの下見板張りで、上層部が白漆喰の2色構成。天守閣最上階は望楼式となっているため、松江の街が大パノラマで眺めることが可能です。五層六階の城内は資料館で、天守雛形をはじめ、「松江城」の歴史を垣間見ることができます。

築城は1611年（慶長16年）。関ヶ原の戦いで功績が認められた「堀尾吉晴」（ほりおよしはる）が1607年（慶長12年）から5年をかけて「松江城」を築城。初代城主は吉晴の息子である「堀尾忠氏」（ほりおただうじ）で、2代目城主は吉晴の孫である「堀尾忠晴」（ほりおただはる）。松江開府の祖である吉晴は、忠晴が「松江城」と城下町松江を建設するのを手伝い、松江市の基盤を共に築きました。

国宝に指定された天守閣は、国内でも貴重な歴史的建造物です。天守の最上に施された鯱鉾（しゃちほこ）の高さは2.08ｍで、これは木造の鯱鉾の中では最大級。天守を支え続ける135本の寄木柱のなかにはハート型の木目があるものがあり、思いを込めて触れることで絆が深まると言われておりカップルや家族連れに人気です。

その他にも、他の城では見られない特殊な桐の階段や、防衛のための石落とし、深さ24ｍの井戸がある地階なども見どころ。2001年（平成13年）に復元された櫓（やぐら）3棟は、1875年（明治8年）に取り壊されましたが、約125年ぶりに復元したものです。築城工事の半分以上が費やされた石垣は、達人の技が光ります。

「松江城」は日本さくら名所100選に選出された桜の名所。約200本の桜が咲き、雅やかな天守閣がピンクの桜で彩られる様は、日本的な美しい春の景色です。夜にはライトアップされ、幻想的な雰囲気を楽しむこともできます。遊覧船での内堀周遊や年間を通したイベントも開催されるので、何度訪れても飽きることがありません。

1600年（慶長5年）の関ヶ原の戦いののち、「堀尾吉晴」は出雲・隠岐両国を拝領した息子の「堀尾忠氏」と、遠江国浜松から「月山富田城」に入城。しかし、堀尾父子は山城である「月山富田城」を、広々とした城下町の形成には不向きだと判断し、松江の亀田山に築城を計画します。1611年に築城された「松江城」は、東西360ｍ、南北560ｍの広さを誇り、その周囲には幅20〜30ｍの内堀も備わっていました。

吉晴の孫である忠晴には跡継ぎがおらず、堀尾家は3代で改易。堀尾家の跡を継いで城主となったのは、1634年（寛永11年）に若狭国小浜から入城した「京極忠高」（きょうごくただたか）です。しかし、1638年（寛永15年）に病死し、3年余りの短い統治に幕を閉じました。京極家の跡を継いだのは、信濃国松本から入城した「徳川家康」（とくがわいえやす）の孫である「松平直政」（まつだいらなおまさ）。以後、松平家が10代まで城主を務め、明治維新を迎えます。

明治維新後は他の城と同様、1871年（明治4年）の廃藩置県で廃城。しかし、廃城令が公布された1873年（明治6年）、出雲郡の豪農らによって買い戻され保存されることになりました。1927年（昭和2年）には松平家が天守を含む城地を市に寄贈し、公園として開放。その後、天守が国宝に指定され国を代表する史跡となりました。